リュシーメソッドについて

 

私が音楽表現の研究に従事してからもう30余年になる。きっかけは大学時代に所属していた合唱団で故高田三郎氏に出会った事である。当時一流の演奏家の指揮など見たこともなかった私は、氏の指揮を見たときに衝撃を受けた。「これが命がけの指揮か!」と。
それ以来私は音楽表現の世界の虜になった。「どうすればあのような表現が出来るようになるのか?」「その方法は?」等様々な疑問が頭に浮かんできた。自分自身で指揮もし、ドイツリートの伴奏なども経験し、多くの表現に関する本も読んだ。しかし答えは得られなかった。
大学院時代にふとした事からリュシーの理論に出会うこととなった。当時今までの音楽理論(形式学や和声学)を使って演奏に応用することに限界を感じていた私にとって、リュシーの理論は画期的なものだった。リュシーの著書を訳しているときに体が感動で震えたのを今でもはっきり覚えている。
「リュシーの理論とはいったい何なのか?」「リュシーは何をしようとしていたのか?」これらの答えが本当に分かったのはここ数年になってからのことである。
リュシーは生涯リズムと音楽表現の理論の研究をしていた。そして我々音楽家にとって必要な大変重要な事を発見した。“表現を生み出すのは拍子とリズムである”これである。何のことはないこの事が我々の演奏表現を大きく変えるのである。
リュシーの言う“リズム”とは我々が日常使っている“リズム”とは大きく異なっている。“動いて止まる1塊の立体的運動体”これである。詳しい説明は拙著「音楽のリズム(中央アート出版社)」「音楽リズムの表現法(中央アート出版社)」に書かれているのでここでは省くが、リュシーはリズムを定義し、リズムを表現するための具体的方法を示し、誰でもこの理論を学んだ人は自力で表現が作れるようにした。
このことによって今まで教師やCDの模倣あるいは勘に頼って表現を作っていた人たちが理性的な表現を自力でするようになるであろう。130年程前にリュシーのおかげでヨーロッパ全土に音楽表現教育革命が起こった。日本もそう遠くない日に同じ事が起こるようにと願っている。
なおリュシーの理論はメソッド化する前にリュシーが亡くなってしまった。拙著「音楽のリズム」の「監修者の手引き」の中に「音楽リズムの表現法」と題して私が長年かけてメソッド化した方法(リュシーメソッド)をまとめておいた。読者の理解の助けになれば幸いである。
リュシーの弟子にはリトミック創始者であるダルクローズなどがおり、ダルクローズはリュシーのリズムと表現の理論を基にリトミックを開発し成功を収めた。他にコルトーは直接パリのコンセルヴァトアールでリュシー自身からリズムと表現の理論を学び、ホロヴィッツラフマニノフは授業で、カザルス、ティボー、シュナーベルブゾーニバレンボイムは独学でリュシーの理論を学んだ。

著書はこちら

[音楽のリズム]

https://www.amazon.co.jp/gp/aw/d/4813604625?SubscriptionId=0768YGPQ79PFMFFBQ1G2&fp=1&pc_redir=T1&redirect=true

[音楽リズムの表現法]

https://www.amazon.co.jp/gp/aw/d/4813606423?pc_redir=T1&qid=1306740179&sr=8-1

[ホームページ]

http://lussymethod.catfood.jp